- 「広報」や「編集」の概念を常時アップデートしていく感じで -

ドラフト一位で獲ったパワフルな若手ライターが大会で優勝したので教えたことを振り返ろうと思ったけど

後輩ライターが「LIGブログの勝手に1日編集長ハッカソン」という面白いブログ記事をつくる大会で優勝しまして。

エンジニアさんやデザイナーさんの力を借りまくりながらも一番面白い記事を書いたということで、これはここぞとばかりに「わしが育てた」宣言をして、パイセンとしてこれまでやってきたことを振り返っておこうかなと思いました。後輩が有名になってしまってからでは遅いから。

私と後輩はリーガル・ハイの古美門&黛みたいなノリで会話しているので、私はいつ「あーさーどーらー!」と怒鳴ろうかタイミングを見計らっていました。しかしもう怒鳴れないかもしれませんね。だって絆があるから(誤用)。

完全に余談ですけどついに「あーさーくーらー(AA略」とも書けなくなるんですね。やきう好きにとってはつらい時代だ…。

序章:出逢い ~ターゲットのペルソナ決めて求人広告書いたら完全に一致した人が応募してきたでござるの巻~


金もない知名度もないベンチャーなので、ふわっとした状態の100人に応募してもらうよりはドンピシャの1人に応募してきてもらえるよう、ライターのリクルーティングは自分で求人広告を書くことからはじめました。

<設定したペルソナ>

「基本的にはWebメディアが好きで普段からいろんな記事を読んでいて、すでに複数のキュレーション、バイラルメディアなどでライターとしての仕事はしたことがある1年以下の経験者だが、1記事あたり500~2,000円とかでひたすら記事を量産したところで未来はあるのだろうか…と不安に思って修行先を探しており、コミュ力が高いというか人とのコミュニケーションが好きなので、言われたことを黙々とやるのではなく話し合いながら一緒に面白いものを作っていきたいという志向性で、以下略」

<応募してきた後輩(25歳)>

「↑…っていう感じです」

<私>

( ゜Д゜)……。

(゜Д゜)

まぁ、中途採用なんて凝った文言とか良い写真とかよりも「で、何やるのか」で判断されるから求人広告のおかげとは思ってないですが、私のスタンスは伝えたかったので想いを詰め込みました。この広告に好感持って応募してくれる人ならミスマッチはないし、一緒に頑張れるだろうと。

私が求めていたのは、能力面の可能性とスタンス面での安定性。能力面の可能性という点では実際にグッとくる記事を1本でも書いてるかどうか。スタンス面での安定性というのは、「本気で『言葉を書く、選ぶだけでお金を頂ける幸せな人生』を歩みたいと考えているかどうか」と「実際に今何やってるのか」。

「ライターになりたいんです!」と言ってるだけの人に対しては「ライターって肩書きつけた名刺を作って配り歩けばそれでライターになれますよ」と答えたいので、既に肚決めて動きながら模索してる最中の人がいいなぁと。

で、後輩のプロフィール読んで、作品読んで、会って話したら

いいじゃないか(AA略)。

と思いまして。パワプロでいうとFBEED的な感じで、三振かホームランかのロマン砲だなと。

「私の中ではドラフト一位です」と役員にお願いしておき、役員面談後に後輩の入社が決定しました。助っ人外国人のビデオを見て5秒で獲得を決めた某GMの気持ちが分かるような気がしました。

第一章:育成開始 ~技術の話より雑談で盛り上がってた気がする~

もちろん書いてもらった原稿への赤入れとか、書く前のコンセプト設計とかで技術的な話をしたりもしたけど、個人的には直接的な「指導」ってあんまり効果ないのではと思っていて。

人生の師匠であるバーテンダーともよく話すのですが、「年上のおじさんが言うことは、その人がさらに年上のおじさんに言われたことをそのまま言ってるだけ」「社会は1秒ごとに変化しているから数年前の成功体験やノウハウなんてアテにならない」「若い子のコメントのほうが気づきにあふれている」と私は思っているので、秋山監督や中畑監督風に「プロのレベルではない」と感じるビロウな部分以外はあんまり細かいこと言いたくないんですよね。

で、たぶんやってたこととしては大きくわけて3つありまして。

1:「私は上司ではない」と理解してもらいました

我々の仕事はただ良いコンテンツをつくることだけなので、Twitter上で「上司様がー」とか書いてたのを見て「上司じゃねぇただこの仕事長くやってるだけのパイセンやゴルァ」と強制しました。そう、まるで上司のような言い方で。

当然のことながら座席も横並びです。上下関係っていう響きからしてすでに面白くないし(主観)、ぶっとんだものをつくるためには身の回りにある面白くないこととか平凡なことをすべて排除したいじゃないですか。

2:どうでもいいことで話しかけるようにしました

自分がどうでもいいことで話しかければ、生真面目な朝ドラヒロインも「このひといつも私の邪魔してくるし、これしょーもないことやけど相談してみよ」と思ってくれるかなぁと思いました。

後輩がイヤホンつけて爆音で音楽を聴きながら作業してようがお構いなしに止めました。「さっきチャットワークでツッコミもらった件やけどー」という仕事絡みの話から「リケジョもドボジョも極めれば金儲けにできるからな。最近ではカープ女子ってだけで仕事もらえるし」という世間話まで。

結果、「パイセンのブラックジョークやばいっすね英国紳士ですか」というようなこと言われ、後輩がTwitter上で「性格悪いパイセン」として私をブランディングしはじめました。


なお私はサマセット・モーム(英国出身)が大好きなのでブラックと言われること自体はしゃーない。20代では残忍、30代では軽薄、40代では皮肉、50代では達者、60代では皮相と評される人生を歩むのも辞さない。


息を吐くようにこういうこと言ってるからあかんのか。

3:先輩の原稿と後輩の原稿の添削をお願いしました**

結局ライターのスキル、最低限のルール以外の実戦的な領域って「書いて、フィードバックもらって、また書く」ということの繰り返しでしか上がらないものじゃないですか。

で、個人的にはそのフィードバックってのも私のようなおっさん(アラサー)ではなくく若い子のほうがいいと思っていて。我がチームにはハイスペックな現役女子大生ライターも在籍しているので、彼女とお互いに添削しあってもらいました。

あと一応私の原稿も読んでもらってますが、これはどっちかというと私が自分の原稿のクオリティ上げたいのと、もし先輩の原稿読んで「こいつプロのレベルじゃないな」と思ったらその人の言うことは全部無視していいかもしれないので、そこを自分でジャッジしてもらいたいなと。あと盗みたいと思ったものは全部盗めるように。

まぁこれはマネジメント的な話でいうと業務としてお願いするよりは電車の中とかでやってもらうほうがいいんでしょうけどね。

###!:あとはとにかく楽しく働くだけです

あとは作業フローの面での補足が一つ。

面倒なことを排除して「つくること」にリソースを全振りするため、基本的に業務連絡と進捗報告は全部ウェッブ上にあげておけばいいと思っています。ていうかそれが可能だから今の時代はリモートワークも広まっているんですよね。

ただ、こと制作職においては、「やばいものをつくる」という仕事に関してはやっぱりテンションが上がった状態で、全力でコミットできるかどうかと思っています。自宅で大好きな音楽を流して仕事したり、お気に入りのカフェに行ってコーヒーの香りに癒やされながら仕事するのも効果的だとは思うんですが、やっぱり人は人によってテンションが上がるので、出社した上で楽しく過ごせる場にできればいいなーと思ってました。


最終章:育成・出荷完了 ~そもそも短期間すぎるから「育成」とか言うのは無理があったわ~

そして1ヶ月が経ち、あっという間に後輩が出場するハッカソン前日を迎えました。

なんか、見習いライターに対して自分が教えられることはある程度教え込んだ気がするし、いいタイミングで対外試合に臨むことになったので、いよいよ弊社のエルドレッドこと一発のあるロマン砲が開花するかなぁと思って状態をチェックしてみました。

浅いところで勝負をなめてました(駄目だこいつ…早くなんとかしないと…のAA略)。

あんまりゆるいのも良くないのかなぁとちょっと反省しました。プロのレベルじゃないビロウな部分だけはまぁまぁ厳しく言ってるんすけどね。

とりあえずは阿部や高橋由伸を指導できる某打撃コーチばりの指導力を発揮して、「いやお前は何も考えず黙ってフルスイングしとけ」と言っておきました。

素直な子なので、最終的にはいい状態で送り出すことができて、なんとなくですが「あぁこの状態ならマジでかっ飛ばしてくるかもなぁ」という予感がしました。

で、自分が満身創痍の状態で取材を終えて、スタバのソファー席で呼吸も苦しく意識も朦朧としていたときに結果報告が来ました。

Twitterにも書いた通り、なんとなく予感はしていたものの鳥肌がぞわっと。


うん。

まぁ、後輩が入社して1ヶ月ちょいしか経ってないし、私の指導が良かったっていうかもともと持ってた能力や才能が遺憾なく発揮されたってだけやと思うけどな。

タイトルも「ドラフト一位のパワフルな若手ライターが大会で優勝したので教えたことを振り返ろうと思ったけど特にたいしたことしてなかった」って感じ。

もはやこの記事は「制作の人間はこういう感じで仕事したいよね」っていう主義主張でしかない疑惑がある。

とはいえ、それはそれで「そんな素質ある大型新人を発掘して無名のベンチャーに入社させた慧眼すげぇ! 現役引退後はスカウトとして仕事ができるね!」って話なので、元広島東洋カープの末永外野手(現・スカウト)ファンとしては嬉しい限りです。

あと、人生の師匠であるバーテンダーから「男は後輩を育ててはじめて一人前だこの野郎」と言われており、そもそも今シーズンの目標が「若いライターを育てる」ことなので、一応前には進んでいるはずだと。

ライターの育成方法って教える相手の性格にもよるからすごく難しいと思うけど、10代の頃からあらゆる人に「お前は人に何かを教える仕事だけはしてはいけない」と言われ続けてきているので、佐々岡二軍投手コーチばりに前評判を覆せるように今後も頑張りたいです。

しかし、今回は取材で行けなかったんですが「記事をつくるハッカソン」ってちょう面白いっすよね。今度あったらぜひ参加したいのでどこか企画してくださいお願いします。