- 「広報」や「編集」の概念を常時アップデートしていく感じで -


結論としては、

インハウスの編集・ライターが事業会社内で期待される働きは “マーケ × PR” って感じなんで、「自分の仕事はいい文章を書くこと」というこだわりを捨て、「つくったもので事業の成長や売上にどれだけ貢献したのか」をクリアにさせること、あるいは圧倒的な愛嬌とコミュ力でねじ伏せろ

という話です。

当たり前の話ですが、インハウスの編集・ライターの理想形は、「うちの編集者は “ものをつくる” ことでめっちゃ事業の成長にコミットしてくれるなぁ」と認められる地位か、「めっちゃいいコンテンツつくれるからあの人は別に売上とかで測らなくてもいいんじゃないか」という地位を築き上げることです。

が、そんな当たり前のことだけを note や Medium に書いて終わるのも芸がないですし、これまでずっとインハウスの PR Editor として仕事をしてきた自分ならではの視点も交えて、もうちょい掘り下げようという記事になります。

最近は Web 編集者のキャリアの可能性なんていう文脈で、インハウスでのエディターが今後もっと求められるのではといった願望っぽい話がたまに聞かれるようになりました。

ですが、実際に企業が求めているエディター像と、世の中にたくさんいるエディター・ライターのスキルセットやマインドは結構ズレがあると思っています。そのへんを変えていくと、世の中における我々の地位も少しはマシになるはずです。

では Short ver. 終了ということで、ここからは Full ver. となります(文字数は 10,000 字ほどです)

※ この記事は 編集とライティングにまつわるアレコレ Advent Calendar 2017 企画への寄稿?です。


--

私はここ 4〜5 年、複数の事業会社で 1〜2 人目のインハウスエディター兼 PR 的なポジションとなり、メディア編集とか Web 制作、SNS や広告運用、緊急事態には映像編集やコーディングをやってきました。Atom よりは Brackets 派なのですが頼むからマークダウンエディタを左右分割にしてほしい(なぜか上下分割しかできない)。

“ 1 人目のインハウスエディター” 最大の魅力は、幅広い仕事を自分の裁量で好きにやれること。社内に味方は皆無ですが「編集者はこうあるべきだよォ。それが業界のマナーであり美しき伝統なんだよォ」などと言われることもないので、100 % 自分の責任のもと、伸び伸び働くことができます。

そこで今回は

  • メディア運営を事業にしていないタイプの IT 系事業会社
  • あるいは自社事業と PR にも力を入れていきたい制作会社
  • 社員数は 30〜300 人

という企業が、インハウスの Web 編集者・ライターを社員で 1〜2 名採用しようとしているとき、立ち上げメンバーとして入っていくためには何が重要か、というテーマで掘り下げていきます。

事業会社の中で “なんかよくわからんけどコンテンツをつくれるらしい人” に降ってくる案件といえば

  • オウンドメディアをやってほしい
  • 会社やサービスをもっと知ってもらうために社内ブログや SNS をやってほしい
  • 良い感じでプレスリリースを書いてほしい
  • 顧客向けのメルマガを書いてほしい
  • 求人広告やスカウトメールを書いてほしい
  • Web 広告のクリエイティブ(文言)で CPA 高い感じのをつくってほしい
  • 受託の Web 制作のコピーライティング・モック制作とかをやってほしい
  • これら総合的に判断して優先順位をつけつつ限られた予算の中で利益にコミットしてほしい

などがあり、いろんな “つくる” 経験が積めます。が、案件ごとに

  • いろんな職種の人と
  • 1 対 1 あるいは “ 1 対多” で
  • 異なる言語で

円滑にコミュニケーションをとる必要があります。

こういう戦場に丸腰で突っ込んでいってボロボロにされて帰ってきて、ライターたちが集う場所で「やっぱ事業会社は私らのこと理解してくれんからあかんわ、編プロとかコンテンツメーカーでじっくり腰を据えて働きたいわ。時代は事業会社でのインターンより Twitter のフォロワー多い有名ライターへの弟子入りだよね」とか夢見てるだけだと、いつまでたっても第二の WELQ みたいなメディアに検索上位をジャックされ、「所詮はネットメディアだから」と軽視される規模のメディアしかつくれない人生で終わると思うので、事前に武装はしていきたいところです。

※この記事における禁句 = 生存バイアス

社内に同業者いないインハウスエディター(ライター)の「超アウェー感」知ってる?

実際、やばいことはいろいろあります。

どんなスキルを持ち合わせていようが「わかりやすいから “ライター” で」

あなたが「いやライターよりは編集のほうがキャリア長いです!」と言っても、たぶん社内では「ライターの ◯◯ さん」と呼ばれます。私も一般的な Web 編集者に比べるとかなり Web マーケ・制作寄りのスキルセットなのですが、だいたい「ライターのあらやさん」と紹介されてきました。ハイパー優秀なマネージャだけは頑なに「うちのディレクターです」と紹介していましたが。

これはだいたい「編集者 is 何」という前提知識の不足が原因だと思われます。「ライター」といえば「文章を書いてる人」とイメージしやすい。

また、「ライター」という名前が一人歩きするほど、文章を書くこと以外のスキルはないものとして扱われがちなので、自分から宣伝したり仕事を取りにいく姿勢が重要です。

「記事がバズった! メディアの PV が ◯ 万達成! Twitter のフォロワー ◯ 人!」→「で?」

Web ライターまわりの人たちが Twitter でキャッキャしてる感じの会話は、だいたいの職種の人からしたら “異国の風景” なので、違う言語での会話としてスルーされます。

社内で上記のようなセリフをそのまま口に出すことは、フィンランド人に日本語で「昨日の高校柔道富山県大会決勝戦すごかったんですよ! 高校生とは思えんくらい最高の一本背負い決まってたんですよ!!」と熱弁しているようなものです。

ですので、社内での会話や Slack 上で理解してもらうには「金額換算するとこれだけ儲かった」「Vやねん! 今期の目標達成待ったなし!」と、ビジネス目線での言語に翻訳する必要があります。

入社 1 ヶ月経過時点での「で、成果は?」

ゼロイチでのメディア運営がメインの業務であろうが、営業色が強い事業会社だと早くて 1 ヶ月、遅くとも四半期での目に見える成果が求められます。

一方で、実際にお金が動いたり、仕事につながったりすると、途端に手のひらを返したように存在価値を認められがちです。 ただ、この状態に到達するには結構時間がかかりますし(メディアなんて半年以上かかりますし)、辛いことがたくさんあると思うので、堪え忍べるかどうかがインハウスエディター・ライターの成功の分かれ道だと思います。なお私は前職のとき完全にブチギレて数ヶ月で辞めようとしました(関係各位ありがとうございました)。

サイトの立ち上げから入る場合、「数字は絶対出すんで、とりあえず 6〜12 ヶ月は泳がせてくれませんかね?」くらい言っておくほうがいいのかも。あと、メディアはどうしても時間かかるし、(アドセンス以外での)売りも立ちづらいので、受託の Web 制作、広告運用とか採用系のタスクをぶんどってきてわかりやすく短期的な数字をつくってお茶を濁すみたいな処世術も結構大事だと思います。

あなたの周囲にいる各職種のメンバーの特徴(制作・開発系部署)

というわけで、社内でのコミュニケーションを円滑に進めるため、職種別の特性と、うまく付き合うために必要なことをまとめました。

まずは同じ “ものをつくる” 部署。「数字! 数字!」という人がいないので落ち着いていたり、殺伐としていたりします。

Web デザイナー・UI デザイナー

ディレクター的な立ち回りを求められるとき、直接やりとりする機会が多い職種です。

業務内容が近いため、比較的ライターとかに理解があるようにも見えますが、どちらかといえば単に「他人に深く干渉しない」人が多い印象です。数字目標を背負っているわけでもなく、セールスやマーケ、ディレクターに比べると穏やかな人が多いため、そもそも争いが起こることが少ないです。 積極的に擁護してくれるわけでもないけど。

ただ、淡々と「いい感じのキャッチコピー考えてよ」「ここのテキスト長いから削ってほしい」という依頼がくる感じです。


たまにこういう戦争は起きますが、まぁ些細なことです。

個人的には「理解しあう」というよりは、「なんとなく良い感じにお付き合いする」くらいの温度感がベストかなと思います。僕らもデザインの良し悪しとかそんなわかりませんし、なんか半端に「デザインってこうですよね〜」「わかりますぅ〜」とか分かったような口をきかないほうがいいと思います。

あと写真とかカメラが好きな人が多いので、そっち系に詳しい人は仲良くなるきっかけができます。

エンジニア(コーダー)

神です。

「なぜエンジニアは神なのか」というエントリは単体で数千字書けると思いますが今回は割愛。ただ 「神だから対等ではなく、崇めなければならない存在」ということだけ頭に入れておいてください。

仕事で直接関わる機会が少ないため、編集者とエンジニアはお互いに「謎の人」というイメージが強そうですが、実は一つ共通点もあるのです。

たとえば、Web 編集者がブログやメディアのちょっとしたカスタマイズをしようと、負の遺産でしかないコードを書いたとします。それをエンジニアの方に見せたとします。

「これはひどい」

彼らは苦笑するだけで、触らぬ神に祟りなしという態度を決め込むので、ここぞとばかりに寿司を差し入れしましょう。:sushi:

「しゃーねーな」

彼らは苦笑しながら、“コードレビュー” や “リファクタリング” という魔法を使います。

コードレビューとは、誤りを検出・修正することを目的としてコードを査読すること。リファクタリングとは、動作の内容は変えずに内部構造だけをいい感じに整えるという仕事です。

そう、まさに編集者が新人ライターに施している “赤入れ” と似ているのです。そういうとこで「仕事内容って実は似てるとこもあるんですね〜」と実感することができます。

ただ、編集者が誤字脱字やイケてない日本語文章をそのまま出してしまったところでせいぜい「嘲笑される」くらいですが、エンジニアのミスは事業の死に直結します。 我々が人間であることはまぁ残念ながら疑いようのない事実ですが、あなたの周囲にいるエンジニアたちが神であることもまた事実なのです。

「完璧にこなして当然」という世界観で生きていて、「こんなことやりました」と SNS でドヤれるわけでもなく、ただ黙々と頑張ってくださっている神々なので、給料が高いのは当たり前です。間違ってもライターが「エンジニアと同じくらいの給料がほしい!」とか言い出さないように教育しましょう。

あと、間違ってもエンジニアの前で「編集者やライターは 1 文字単位でこだわって、ひらがなカタカナ漢字の比率も気をつけてるんです」とかドヤってはいけません。 そんなことはそもそもプロとして仕事をする人間であればどの職種でも当然やってますし、コードを 1 行でも短くするため、動作を 0.1 秒でも軽くするために日々頭を悩ませているエンジニアたちなどは、Slack のプライベートチャンネルであなたを失笑の的にするかもしれません :trollface:

実際のところ、ほとんどの編集・ライターはエンジニアと距離を縮めることができずに壁を感じてしまいます。エンジニアと日常的に会話するには、我々にはあまりにも “共通の話題” が少ないのです。

まず、ほとんどのエンジニアは、Web メディアや表示速度向上、LP 制作、アドテクのような分野にはあまり興味がないです。やりたいのはもっと “面白そうなこと” です。

盛り上がるネタは、新しく出たツール・デバイス・言語の使い勝手や、今年参加する Advent Calendar の話や、php がいかにイケてないかという話や、今期のアニメでどれを切ったかという話や、インスタよりも Slack でウケる LGTM 画像や、そんなことよりも寿司が食べたい :sushi: という話です。tumblr のカスタマイズがいかにやりづらいかという話は私が一方的にしてますがあまり盛り上がりません。

仲良くなるとしたら、そういう開発者文化にどっぷり浸かるのみです。エンジニアの神々は “他人” とはあまり関わらない傾向があります。

ちなみに、フロントエンドのエンジニアはデザイナーに近い感じで若干クリエイターっぽく、バックエンドやアプリ系のエンジニアは寡黙で職人気質という傾向があります。人によってどっちのほうが相性いいとかもありそう。

あなたの周囲にいる各職種のメンバーとの接し方(ビジネス系部署)

インハウスのエディターは、ビジネス系・開発系どちらの管轄に入るかどうかが微妙なところです(私はビジネス管轄も開発管轄も両方経験あるので)。会社によってはセールスやマーケ系のマネージャの下だったり、経営者の下だったりにつくこともあります。

そこで、こちらの島に触れるにあたって改めて言っておきますが、あなたが入社したばかりの時点での社内では “いいコンテンツをつくってあげること” や “代表やスタッフの言いたいことを汲み取って言語化してあげること” などは特に求められていません。 最も求められるのは「売上や事業の成長にどこで貢献しているのか」というわかりやすい実感です。

マーケター・運用系ディレクター(各部署のマネージャも近い)

頭脳をフル活用して数字をあげること、“0→1” というよりは “1→100” をミッションとしている人種です。記事量産型のメディア編集長だったり、SEO 担当だったり、広告担当だったり、自社サービスのグロースハック担当だったり業務内容は幅広いのですが、人種としては結構わかりやすいと思っています。

合理主義者なので、クリエイティブへのこだわりは低いというか、「クオリティが高い低いなんて KPI 達成してるかどうかでしかないでしょ」「KPI 達成できるものがクオリティ高いってことだよ」という割り切り方をしている人が多いです。

つまり、あなたが「これダサくない?」と思うようなクリエイティブも「いや、ダサいとかじゃなくて、これで数字上がってるから」と普通に運用したりするので、意見は衝突することもあります。

ヤバいマーケターの具体例としては、今回の「編集者やライターが知見とか現状とかを共有できるといいなとおもって作りました」というアドベントカレンダーの企画で「andronavi編集部が紹介!クリスマスにあると役立つかもアプリやスマホグッズ」という宣伝でしかない記事をぶっこんでくるような、ツラの皮が厚すぎて洗濯バサミ 108 個くらいつける芸で新春隠し芸大会に出られそうな人とかのことです。彼らは「やらないよりはやるほうがいいっしょ」「数字あげられないやつにとやかく言われたくないし」という軽いノリでぶっこんでくるので、特に深く考えてないと思います。


(超わかりやすい実例をありがとうございます)

マーケ職種は基本的に「一つの作業に時間をかけるのは無駄」「たくさん案を出して、最適なものを検証していくほうが効率的」というタイプなので、クリエイティブ部署に比べるとパッと見でイケてるものが上がってくる確率は低いです。

うまく付き合う、つまり存在価値を認めてもらうためには、肌感覚でのクオリティで上回りつつ、しっかり数字も出すことだけです。

マーケターはいくら仲良くなっても私情は挟みませんし、もし彼らが肌感覚として「このコンテンツいいな…」と思ったとしても、数字がついてこなければ評価されづらいです。

人事・採用担当

採用系コンテンツを制作するときには連携する職種です。

採用系の職種は、本人あるいは特にマネージャクラスが営業畑出身であることが多いため、気質的にはセールス寄りです(エントリー数や採用単価だけでなく人材のレベルも重視されるので、セールスほど短期的な数字至上主義ではない感じですが)。

編集・ライターが貢献できる “母集団形成”・“魅力づけ” のフェーズにおいても

  • スカウトメールの開封率・返信率
  • 求人への応募数(一次選考への参加率)
  • 現場スタッフの面接の通過率(応募者のスペック、マッチ具合)
  • 採用系イベントの告知ページおよび SNS 告知の広告効果

など、KGI(特定職種を特定人数採用)達成のための KPI を細かくチェックする体制が整えられがちです。あと “送信数” つまり “アクション数” という行動 KPI を欲しがりがち。

営業を経験していない新卒生え抜きの採用担当者は、単純に “素敵なコンテンツ” をつくることで仲良くしてもらえたりします。ただ、前項で触れた通りマネージャとなると完全に別の人種なので、うまく付き合うにはとにかく肌感覚で良いと思われるコンテンツをつくりつつ、優秀な人材からのエントリーをかき集めることです。

採用のマネージャクラスに認められようと思ったら、間違っても「社員インタビュー! ◯◯さん(まずお前誰やねん)の日常に密着☆」みたいなタイトルの THE・自己満ブログとか書かないようにしましょう。どれだけプロのライターが巧みなインタビュー術で素晴らしい原稿に仕上げたとしても、それを読むのはあなたと ◯◯ さんのお知り合いだけです。

採用の領域自体が年々血の海になっているため、まず Web マーケティングという概念を理解しましょう。元バーテンダーや元ニートなど変な経歴の社員はどこでもいますし、職種の垣根を超えたランチ会や社内勉強会はどこでもやってますし、訴求できるポイントはたぶんそこではありません。むしろ「こういう面あるほうが求職者ウケいいっすよ」と、PR 側から提案するくらいじゃないと競争力が生まれません。

営業・セールスコンサルティング・アカウントエグゼクティブ etc

編集・ライターに限らず、エンジニア・デザイナーも同様に、もっとも我々が古くから戦争を繰り返してきた人たち。会社を明日も存続させるため、“0→1” をつくりだす人たち。

結論として、わかりあえないタイプのセールスとは一生分かりあえません。 お互いに関わるメリットがないので、関わらなくていいと思います。

もちろん心穏やかなセールスもたくさんいますが、心穏やかに見えても彼ら・彼女らの心中は「Why Writing People?」であふれています。彼らは編集・ライターの価値を理解しているのではなく “我慢している” か “考える余裕がない” のだと思ってください。

認めてもらうには超シンプルに、自分の発信力とブランドで案件を取ってくるか、記事広告や Web 運用の案件で高い売上を達成することです。

後者で最大の問題が「営業がそもそも産廃処理みたいな案件を取ってくる」事案ですが、とりあえずは背景を理解しましょう。

主に 27 歳以下の、朝から夜遅くまでバリバリ働いてる若手の多くは、「俺らは必死に頑張ってて月給 25〜30 万とかなのに、売上もあげてないエンジニアとかライターはなんであんなもらってんの? お前らの給料どっから出てると思ってんの?」という疑問を抱いています(IT ベンチャーあるある)。

特に IT ベンチャー企業にいるようなセールスは、「達成できなかったら生きてる価値ないから」という環境で育ったか、そんな上司に厳しくしごかれて育ったというパターンが多いです。

そうなると「編集やデザイナーが苦労するかもしれないから、この案件は落ちのほうがいいのかな…」と考える余裕などなく、「まず自分のノルマを達成することが何よりも大事」なのです。そして、一般的には無名(IT 業界では有名だとしても)の会社で、朝から晩まで仕事漬けの営業という仕事をやる最大のメリットは「早期(四半期単位)の昇給・昇格」なので、周囲に足を引っ張られて自分の評価が上がらないのであればさっさと転職したほうがマシなのです。 歩み寄るかどうかはまったく別の問題ですが、冷静に話し合うためにも理解はしておかなければなりません。

そして、セールスの中堅〜ベテラン社員に「数字じゃない世界もあるんですよ」と認めさせることは、「君たちが必死で生き抜いてきた経験は今何の役にも立たない」という発言になりかねないことをまず理解しましょう。 彼らはその「数字を達成したか、しなかったか」という戦場でずっと身体を酷使して戦い、我々が「体調悪いんでリモートで働きます」と言っている日も客先に訪問し、上司にもクライアントにも激詰めされながら勝利を掴み取り、今の地位を築き上げてきたのです。果たしてそれが最適な手法だったのか、歩み寄るかどうかなどはまったく別の問題ですが以下同文。

私は基本的に、営業的な価値観と「お前らも俺たちと同じ苦労をしろ」という同調圧力でクリエイターたちも支配しようとする脳筋たちに媚びることは絶対にありません。ただ、一方的に被害者ヅラしてセールス全体の悪口を言うだけのなんちゃってクリエイターを見つけたら回り蹴りしていい条例の制定を千葉市に求めはしたい。

つらいこともあったけど、編集者・クリエイター集団より事業会社が好きです



(いらすとやを挟むと一気に脱力感が出るのがいいですね)

編集者・ライターはもちろん、デザイナーとかエンジニアでも「いやー、やっぱ十分なスキルとフォロワー数がついたらさっさとフリーになってリモートでやるべきだよね、正社員とか週 5 日オフィスに出社とか今時ダサいよね」とか言い出す輩をとりあえず引っ叩いてもいい条例とか千葉市が出してくれないかなーとか思っているあらやです(改めて挨拶)。

だいたい制作系の仕事って「フリーでいろんな仕事やってる人はイケてる」みたいな空気になりがちです。しかし事業会社で働いたことがある人はだいたい見たことあるでしょう。“なんか週に 1〜2 日ふらーっと社内に現れて、一体何に貢献してるのかまったくわからんけど月に 10〜20 万とかもらってるらしい自称コンサルタント” という生物を。一部まじで優秀な人もいますが、だいたいは…ねぇ?

そうやって陰口を叩かれる謎の人にならないためにも、事業会社でがっつり働くインハウスエディター的なキャリアにも注目が集まればいいなと思っています。

SNS や Web メディア単体でできることには限界があります。自分が惚れ込んだ経営者の力になって、他の職種のいろんな人たちと結束し、一つの事業を成功させるという大きな目標(決して上場ゴールとかではない)に向かっていくという人生も面白いです。

編集者の仕事が『価値ある情報を見つけ、集めて編み、付加価値をつけて、高く売る』ことだとしたら、いろんな人がいて、それぞれに背景があり、経営陣の人生を凝縮したようなサービス・製品がある事業会社という環境は、実に腕のふるいがいのある “遊び場” ではないでしょうか。

興味がある人は、ぜひ事業会社に突撃していってみてほしいなと思っています。まぁまぁの確率で心に一生残る傷を負ってしまうリスクもありますし、私は編プロで働いたことないから比較できないんですけど、中小規模の事業会社は青春感あって楽しいんですよ。

【体験談】事業会社の1人目のインハウスエディターとして入社し、他の職種の人たちとうまく付き合うために必要なスキルと心構え


結論としては、

インハウスの編集・ライターが事業会社内で期待される働きは “マーケ × PR” って感じなんで、「自分の仕事はいい文章を書くこと」というこだわりを捨て、「つくったもので事業の成長や売上にどれだけ貢献したのか」をクリアにさせること、あるいは圧倒的な愛嬌とコミュ力でねじ伏せろ

という話です。

当たり前の話ですが、インハウスの編集・ライターの理想形は、「うちの編集者は “ものをつくる” ことでめっちゃ事業の成長にコミットしてくれるなぁ」と認められる地位か、「めっちゃいいコンテンツつくれるからあの人は別に売上とかで測らなくてもいいんじゃないか」という地位を築き上げることです。

が、そんな当たり前のことだけを note や Medium に書いて終わるのも芸がないですし、これまでずっとインハウスの PR Editor として仕事をしてきた自分ならではの視点も交えて、もうちょい掘り下げようという記事になります。

最近は Web 編集者のキャリアの可能性なんていう文脈で、インハウスでのエディターが今後もっと求められるのではといった願望っぽい話がたまに聞かれるようになりました。

ですが、実際に企業が求めているエディター像と、世の中にたくさんいるエディター・ライターのスキルセットやマインドは結構ズレがあると思っています。そのへんを変えていくと、世の中における我々の地位も少しはマシになるはずです。

では Short ver. 終了ということで、ここからは Full ver. となります(文字数は 10,000 字ほどです)

※ この記事は 編集とライティングにまつわるアレコレ Advent Calendar 2017 企画への寄稿?です。


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私はここ 4〜5 年、複数の事業会社で 1〜2 人目のインハウスエディター兼 PR 的なポジションとなり、メディア編集とか Web 制作、SNS や広告運用、緊急事態には映像編集やコーディングをやってきました。Atom よりは Brackets 派なのですが頼むからマークダウンエディタを左右分割にしてほしい(なぜか上下分割しかできない)。

“ 1 人目のインハウスエディター” 最大の魅力は、幅広い仕事を自分の裁量で好きにやれること。社内に味方は皆無ですが「編集者はこうあるべきだよォ。それが業界のマナーであり美しき伝統なんだよォ」などと言われることもないので、100 % 自分の責任のもと、伸び伸び働くことができます。

そこで今回は

  • メディア運営を事業にしていないタイプの IT 系事業会社
  • あるいは自社事業と PR にも力を入れていきたい制作会社
  • 社員数は 30〜300 人

という企業が、インハウスの Web 編集者・ライターを社員で 1〜2 名採用しようとしているとき、立ち上げメンバーとして入っていくためには何が重要か、というテーマで掘り下げていきます。

事業会社の中で “なんかよくわからんけどコンテンツをつくれるらしい人” に降ってくる案件といえば

  • オウンドメディアをやってほしい
  • 会社やサービスをもっと知ってもらうために社内ブログや SNS をやってほしい
  • 良い感じでプレスリリースを書いてほしい
  • 顧客向けのメルマガを書いてほしい
  • 求人広告やスカウトメールを書いてほしい
  • Web 広告のクリエイティブ(文言)で CPA 高い感じのをつくってほしい
  • 受託の Web 制作のコピーライティング・モック制作とかをやってほしい
  • これら総合的に判断して優先順位をつけつつ限られた予算の中で利益にコミットしてほしい

などがあり、いろんな “つくる” 経験が積めます。が、案件ごとに

  • いろんな職種の人と
  • 1 対 1 あるいは “ 1 対多” で
  • 異なる言語で

円滑にコミュニケーションをとる必要があります。

こういう戦場に丸腰で突っ込んでいってボロボロにされて帰ってきて、ライターたちが集う場所で「やっぱ事業会社は私らのこと理解してくれんからあかんわ、編プロとかコンテンツメーカーでじっくり腰を据えて働きたいわ。時代は事業会社でのインターンより Twitter のフォロワー多い有名ライターへの弟子入りだよね」とか夢見てるだけだと、いつまでたっても第二の WELQ みたいなメディアに検索上位をジャックされ、「所詮はネットメディアだから」と軽視される規模のメディアしかつくれない人生で終わると思うので、事前に武装はしていきたいところです。

※この記事における禁句 = 生存バイアス

社内に同業者いないインハウスエディター(ライター)の「超アウェー感」知ってる?

実際、やばいことはいろいろあります。

どんなスキルを持ち合わせていようが「わかりやすいから “ライター” で」

あなたが「いやライターよりは編集のほうがキャリア長いです!」と言っても、たぶん社内では「ライターの ◯◯ さん」と呼ばれます。私も一般的な Web 編集者に比べるとかなり Web マーケ・制作寄りのスキルセットなのですが、だいたい「ライターのあらやさん」と紹介されてきました。ハイパー優秀なマネージャだけは頑なに「うちのディレクターです」と紹介していましたが。

これはだいたい「編集者 is 何」という前提知識の不足が原因だと思われます。「ライター」といえば「文章を書いてる人」とイメージしやすい。

また、「ライター」という名前が一人歩きするほど、文章を書くこと以外のスキルはないものとして扱われがちなので、自分から宣伝したり仕事を取りにいく姿勢が重要です。

「記事がバズった! メディアの PV が ◯ 万達成! Twitter のフォロワー ◯ 人!」→「で?」

Web ライターまわりの人たちが Twitter でキャッキャしてる感じの会話は、だいたいの職種の人からしたら “異国の風景” なので、違う言語での会話としてスルーされます。

社内で上記のようなセリフをそのまま口に出すことは、フィンランド人に日本語で「昨日の高校柔道富山県大会決勝戦すごかったんですよ! 高校生とは思えんくらい最高の一本背負い決まってたんですよ!!」と熱弁しているようなものです。

ですので、社内での会話や Slack 上で理解してもらうには「金額換算するとこれだけ儲かった」「Vやねん! 今期の目標達成待ったなし!」と、ビジネス目線での言語に翻訳する必要があります。

入社 1 ヶ月経過時点での「で、成果は?」

ゼロイチでのメディア運営がメインの業務であろうが、営業色が強い事業会社だと早くて 1 ヶ月、遅くとも四半期での目に見える成果が求められます。

一方で、実際にお金が動いたり、仕事につながったりすると、途端に手のひらを返したように存在価値を認められがちです。 ただ、この状態に到達するには結構時間がかかりますし(メディアなんて半年以上かかりますし)、辛いことがたくさんあると思うので、堪え忍べるかどうかがインハウスエディター・ライターの成功の分かれ道だと思います。なお私は前職のとき完全にブチギレて数ヶ月で辞めようとしました(関係各位ありがとうございました)。

サイトの立ち上げから入る場合、「数字は絶対出すんで、とりあえず 6〜12 ヶ月は泳がせてくれませんかね?」くらい言っておくほうがいいのかも。あと、メディアはどうしても時間かかるし、(アドセンス以外での)売りも立ちづらいので、受託の Web 制作、広告運用とか採用系のタスクをぶんどってきてわかりやすく短期的な数字をつくってお茶を濁すみたいな処世術も結構大事だと思います。

あなたの周囲にいる各職種のメンバーの特徴(制作・開発系部署)

というわけで、社内でのコミュニケーションを円滑に進めるため、職種別の特性と、うまく付き合うために必要なことをまとめました。

まずは同じ “ものをつくる” 部署。「数字! 数字!」という人がいないので落ち着いていたり、殺伐としていたりします。

Web デザイナー・UI デザイナー

ディレクター的な立ち回りを求められるとき、直接やりとりする機会が多い職種です。

業務内容が近いため、比較的ライターとかに理解があるようにも見えますが、どちらかといえば単に「他人に深く干渉しない」人が多い印象です。数字目標を背負っているわけでもなく、セールスやマーケ、ディレクターに比べると穏やかな人が多いため、そもそも争いが起こることが少ないです。 積極的に擁護してくれるわけでもないけど。

ただ、淡々と「いい感じのキャッチコピー考えてよ」「ここのテキスト長いから削ってほしい」という依頼がくる感じです。


たまにこういう戦争は起きますが、まぁ些細なことです。

個人的には「理解しあう」というよりは、「なんとなく良い感じにお付き合いする」くらいの温度感がベストかなと思います。僕らもデザインの良し悪しとかそんなわかりませんし、なんか半端に「デザインってこうですよね〜」「わかりますぅ〜」とか分かったような口をきかないほうがいいと思います。

あと写真とかカメラが好きな人が多いので、そっち系に詳しい人は仲良くなるきっかけができます。

エンジニア(コーダー)

神です。

「なぜエンジニアは神なのか」というエントリは単体で数千字書けると思いますが今回は割愛。ただ 「神だから対等ではなく、崇めなければならない存在」ということだけ頭に入れておいてください。

仕事で直接関わる機会が少ないため、編集者とエンジニアはお互いに「謎の人」というイメージが強そうですが、実は一つ共通点もあるのです。

たとえば、Web 編集者がブログやメディアのちょっとしたカスタマイズをしようと、負の遺産でしかないコードを書いたとします。それをエンジニアの方に見せたとします。

「これはひどい」

彼らは苦笑するだけで、触らぬ神に祟りなしという態度を決め込むので、ここぞとばかりに寿司を差し入れしましょう。:sushi:

「しゃーねーな」

彼らは苦笑しながら、“コードレビュー” や “リファクタリング” という魔法を使います。

コードレビューとは、誤りを検出・修正することを目的としてコードを査読すること。リファクタリングとは、動作の内容は変えずに内部構造だけをいい感じに整えるという仕事です。

そう、まさに編集者が新人ライターに施している “赤入れ” と似ているのです。そういうとこで「仕事内容って実は似てるとこもあるんですね〜」と実感することができます。

ただ、編集者が誤字脱字やイケてない日本語文章をそのまま出してしまったところでせいぜい「嘲笑される」くらいですが、エンジニアのミスは事業の死に直結します。 我々が人間であることはまぁ残念ながら疑いようのない事実ですが、あなたの周囲にいるエンジニアたちが神であることもまた事実なのです。

「完璧にこなして当然」という世界観で生きていて、「こんなことやりました」と SNS でドヤれるわけでもなく、ただ黙々と頑張ってくださっている神々なので、給料が高いのは当たり前です。間違ってもライターが「エンジニアと同じくらいの給料がほしい!」とか言い出さないように教育しましょう。

あと、間違ってもエンジニアの前で「編集者やライターは 1 文字単位でこだわって、ひらがなカタカナ漢字の比率も気をつけてるんです」とかドヤってはいけません。 そんなことはそもそもプロとして仕事をする人間であればどの職種でも当然やってますし、コードを 1 行でも短くするため、動作を 0.1 秒でも軽くするために日々頭を悩ませているエンジニアたちなどは、Slack のプライベートチャンネルであなたを失笑の的にするかもしれません :trollface:

実際のところ、ほとんどの編集・ライターはエンジニアと距離を縮めることができずに壁を感じてしまいます。エンジニアと日常的に会話するには、我々にはあまりにも “共通の話題” が少ないのです。

まず、ほとんどのエンジニアは、Web メディアや表示速度向上、LP 制作、アドテクのような分野にはあまり興味がないです。やりたいのはもっと “面白そうなこと” です。

盛り上がるネタは、新しく出たツール・デバイス・言語の使い勝手や、今年参加する Advent Calendar の話や、php がいかにイケてないかという話や、今期のアニメでどれを切ったかという話や、インスタよりも Slack でウケる LGTM 画像や、そんなことよりも寿司が食べたい :sushi: という話です。tumblr のカスタマイズがいかにやりづらいかという話は私が一方的にしてますがあまり盛り上がりません。

仲良くなるとしたら、そういう開発者文化にどっぷり浸かるのみです。エンジニアの神々は “他人” とはあまり関わらない傾向があります。

ちなみに、フロントエンドのエンジニアはデザイナーに近い感じで若干クリエイターっぽく、バックエンドやアプリ系のエンジニアは寡黙で職人気質という傾向があります。人によってどっちのほうが相性いいとかもありそう。

あなたの周囲にいる各職種のメンバーとの接し方(ビジネス系部署)

インハウスのエディターは、ビジネス系・開発系どちらの管轄に入るかどうかが微妙なところです(私はビジネス管轄も開発管轄も両方経験あるので)。会社によってはセールスやマーケ系のマネージャの下だったり、経営者の下だったりにつくこともあります。

そこで、こちらの島に触れるにあたって改めて言っておきますが、あなたが入社したばかりの時点での社内では “いいコンテンツをつくってあげること” や “代表やスタッフの言いたいことを汲み取って言語化してあげること” などは特に求められていません。 最も求められるのは「売上や事業の成長にどこで貢献しているのか」というわかりやすい実感です。

マーケター・運用系ディレクター(各部署のマネージャも近い)

頭脳をフル活用して数字をあげること、“0→1” というよりは “1→100” をミッションとしている人種です。記事量産型のメディア編集長だったり、SEO 担当だったり、広告担当だったり、自社サービスのグロースハック担当だったり業務内容は幅広いのですが、人種としては結構わかりやすいと思っています。

合理主義者なので、クリエイティブへのこだわりは低いというか、「クオリティが高い低いなんて KPI 達成してるかどうかでしかないでしょ」「KPI 達成できるものがクオリティ高いってことだよ」という割り切り方をしている人が多いです。

つまり、あなたが「これダサくない?」と思うようなクリエイティブも「いや、ダサいとかじゃなくて、これで数字上がってるから」と普通に運用したりするので、意見は衝突することもあります。

ヤバいマーケターの具体例としては、今回の「編集者やライターが知見とか現状とかを共有できるといいなとおもって作りました」というアドベントカレンダーの企画で「andronavi編集部が紹介!クリスマスにあると役立つかもアプリやスマホグッズ」という宣伝でしかない記事をぶっこんでくるような、ツラの皮が厚すぎて洗濯バサミ 108 個くらいつける芸で新春隠し芸大会に出られそうな人とかのことです。彼らは「やらないよりはやるほうがいいっしょ」「数字あげられないやつにとやかく言われたくないし」という軽いノリでぶっこんでくるので、特に深く考えてないと思います。


(超わかりやすい実例をありがとうございます)

マーケ職種は基本的に「一つの作業に時間をかけるのは無駄」「たくさん案を出して、最適なものを検証していくほうが効率的」というタイプなので、クリエイティブ部署に比べるとパッと見でイケてるものが上がってくる確率は低いです。

うまく付き合う、つまり存在価値を認めてもらうためには、肌感覚でのクオリティで上回りつつ、しっかり数字も出すことだけです。

マーケターはいくら仲良くなっても私情は挟みませんし、もし彼らが肌感覚として「このコンテンツいいな…」と思ったとしても、数字がついてこなければ評価されづらいです。

人事・採用担当

採用系コンテンツを制作するときには連携する職種です。

採用系の職種は、本人あるいは特にマネージャクラスが営業畑出身であることが多いため、気質的にはセールス寄りです(エントリー数や採用単価だけでなく人材のレベルも重視されるので、セールスほど短期的な数字至上主義ではない感じですが)。

編集・ライターが貢献できる “母集団形成”・“魅力づけ” のフェーズにおいても

  • スカウトメールの開封率・返信率
  • 求人への応募数(一次選考への参加率)
  • 現場スタッフの面接の通過率(応募者のスペック、マッチ具合)
  • 採用系イベントの告知ページおよび SNS 告知の広告効果

など、KGI(特定職種を特定人数採用)達成のための KPI を細かくチェックする体制が整えられがちです。あと “送信数” つまり “アクション数” という行動 KPI を欲しがりがち。

営業を経験していない新卒生え抜きの採用担当者は、単純に “素敵なコンテンツ” をつくることで仲良くしてもらえたりします。ただ、前項で触れた通りマネージャとなると完全に別の人種なので、うまく付き合うにはとにかく肌感覚で良いと思われるコンテンツをつくりつつ、優秀な人材からのエントリーをかき集めることです。

採用のマネージャクラスに認められようと思ったら、間違っても「社員インタビュー! ◯◯さん(まずお前誰やねん)の日常に密着☆」みたいなタイトルの THE・自己満ブログとか書かないようにしましょう。どれだけプロのライターが巧みなインタビュー術で素晴らしい原稿に仕上げたとしても、それを読むのはあなたと ◯◯ さんのお知り合いだけです。

採用の領域自体が年々血の海になっているため、まず Web マーケティングという概念を理解しましょう。元バーテンダーや元ニートなど変な経歴の社員はどこでもいますし、職種の垣根を超えたランチ会や社内勉強会はどこでもやってますし、訴求できるポイントはたぶんそこではありません。むしろ「こういう面あるほうが求職者ウケいいっすよ」と、PR 側から提案するくらいじゃないと競争力が生まれません。

営業・セールスコンサルティング・アカウントエグゼクティブ etc

編集・ライターに限らず、エンジニア・デザイナーも同様に、もっとも我々が古くから戦争を繰り返してきた人たち。会社を明日も存続させるため、“0→1” をつくりだす人たち。

結論として、わかりあえないタイプのセールスとは一生分かりあえません。 お互いに関わるメリットがないので、関わらなくていいと思います。

もちろん心穏やかなセールスもたくさんいますが、心穏やかに見えても彼ら・彼女らの心中は「Why Writing People?」であふれています。彼らは編集・ライターの価値を理解しているのではなく “我慢している” か “考える余裕がない” のだと思ってください。

認めてもらうには超シンプルに、自分の発信力とブランドで案件を取ってくるか、記事広告や Web 運用の案件で高い売上を達成することです。

後者で最大の問題が「営業がそもそも産廃処理みたいな案件を取ってくる」事案ですが、とりあえずは背景を理解しましょう。

主に 27 歳以下の、朝から夜遅くまでバリバリ働いてる若手の多くは、「俺らは必死に頑張ってて月給 25〜30 万とかなのに、売上もあげてないエンジニアとかライターはなんであんなもらってんの? お前らの給料どっから出てると思ってんの?」という疑問を抱いています(IT ベンチャーあるある)。

特に IT ベンチャー企業にいるようなセールスは、「達成できなかったら生きてる価値ないから」という環境で育ったか、そんな上司に厳しくしごかれて育ったというパターンが多いです。

そうなると「編集やデザイナーが苦労するかもしれないから、この案件は落ちのほうがいいのかな…」と考える余裕などなく、「まず自分のノルマを達成することが何よりも大事」なのです。そして、一般的には無名(IT 業界では有名だとしても)の会社で、朝から晩まで仕事漬けの営業という仕事をやる最大のメリットは「早期(四半期単位)の昇給・昇格」なので、周囲に足を引っ張られて自分の評価が上がらないのであればさっさと転職したほうがマシなのです。 歩み寄るかどうかはまったく別の問題ですが、冷静に話し合うためにも理解はしておかなければなりません。

そして、セールスの中堅〜ベテラン社員に「数字じゃない世界もあるんですよ」と認めさせることは、「君たちが必死で生き抜いてきた経験は今何の役にも立たない」という発言になりかねないことをまず理解しましょう。 彼らはその「数字を達成したか、しなかったか」という戦場でずっと身体を酷使して戦い、我々が「体調悪いんでリモートで働きます」と言っている日も客先に訪問し、上司にもクライアントにも激詰めされながら勝利を掴み取り、今の地位を築き上げてきたのです。果たしてそれが最適な手法だったのか、歩み寄るかどうかなどはまったく別の問題ですが以下同文。

私は基本的に、営業的な価値観と「お前らも俺たちと同じ苦労をしろ」という同調圧力でクリエイターたちも支配しようとする脳筋たちに媚びることは絶対にありません。ただ、一方的に被害者ヅラしてセールス全体の悪口を言うだけのなんちゃってクリエイターを見つけたら回り蹴りしていい条例の制定を千葉市に求めはしたい。

つらいこともあったけど、編集者・クリエイター集団より事業会社が好きです



(いらすとやを挟むと一気に脱力感が出るのがいいですね)

編集者・ライターはもちろん、デザイナーとかエンジニアでも「いやー、やっぱ十分なスキルとフォロワー数がついたらさっさとフリーになってリモートでやるべきだよね、正社員とか週 5 日オフィスに出社とか今時ダサいよね」とか言い出す輩をとりあえず引っ叩いてもいい条例とか千葉市が出してくれないかなーとか思っているあらやです(改めて挨拶)。

だいたい制作系の仕事って「フリーでいろんな仕事やってる人はイケてる」みたいな空気になりがちです。しかし事業会社で働いたことがある人はだいたい見たことあるでしょう。“なんか週に 1〜2 日ふらーっと社内に現れて、一体何に貢献してるのかまったくわからんけど月に 10〜20 万とかもらってるらしい自称コンサルタント” という生物を。一部まじで優秀な人もいますが、だいたいは…ねぇ?

そうやって陰口を叩かれる謎の人にならないためにも、事業会社でがっつり働くインハウスエディター的なキャリアにも注目が集まればいいなと思っています。

SNS や Web メディア単体でできることには限界があります。自分が惚れ込んだ経営者の力になって、他の職種のいろんな人たちと結束し、一つの事業を成功させるという大きな目標(決して上場ゴールとかではない)に向かっていくという人生も面白いです。

編集者の仕事が『価値ある情報を見つけ、集めて編み、付加価値をつけて、高く売る』ことだとしたら、いろんな人がいて、それぞれに背景があり、経営陣の人生を凝縮したようなサービス・製品がある事業会社という環境は、実に腕のふるいがいのある “遊び場” ではないでしょうか。

興味がある人は、ぜひ事業会社に突撃していってみてほしいなと思っています。まぁまぁの確率で心に一生残る傷を負ってしまうリスクもありますし、私は編プロで働いたことないから比較できないんですけど、中小規模の事業会社は青春感あって楽しいんですよ。