- 「広報」や「編集」の概念を常時アップデートしていく感じで -


地域活性化に関する仕事をやりたいっていう学生も増えてきましたが、まずたいていの企業の中で何かしらの価値を発揮できるようなスキルを身につけてからでいいと思っています。

地方は来るもの拒まずスタンスのほうがいいけど、“地方に来たけど価値出せない → 褒めてもらえない、居場所がない → 勝手に憧れて地方に来たのに勝手に幻滅して帰っていく” みたいな悲劇は少しでも減ってほしい。地方で働きたいって人でわざわざ富山県を選ぶ人は少ないと思うけど、富山県民は基本的に余所者には厳しいから(ここまで冒頭の挨拶)。

ということで、富山出身千葉在住・地域系のプロジェクトを準備中のシビックテッカーとして、RESASなどの地域データをつかって今後の地域社会に必要なプロダクトをつくるハッカソン「RESAS×Japan Hackathon」を見学してきました。

運営を仕切っていた、オープンデータ界隈では有名な “とにかく明るい五十嵐” さん(E2D3)に誘われてホイホイついていったって感じですが、地方で深刻な課題の解決を目指すプロダクトを見て、改めて「地方×IT」の今後ってどうなるんかなーってことを考えました。という、「裏・レポート」みたいな感じです。


一応、オフィシャルなまとめというか時系列順の実況と結果はこちらに。

2/4(土)5(日) RESAS×Japan Hackathon~地域の連鎖をデザインしよう〜(togetter)

各地域のデータをオープン化した RESAS は、“地元を救う” 施策を考えやすくなる

本編の前に補足説明を。

今回のハッカソンで使用した RESAS とは、国がオフィシャルに提供する「地域経済分析システム」のこと。「産業マップ」「地域経済循環マップ」「農林水産業マップ」「観光マップ」「人口マップ」「消費マップ」「自治体比較マップ」など、地方の自治体や企業が施策を考える上で参考にできるデータ集です。

地域ごとに、年齢別の人口分布と推移予測といったスタンダードなデータから、生活用品の購入金額、自地域の商品をよく買ってくれている地域など突っ込んだデータがわかるので、地域活性化および最近アツい「地方×IT(Civic Tech)」のプロダクトを企画する上で参考になります。

地域ごとの違いがわかることも大きいですが、自分たちが住む地域の傾向がわかることで、特に地方独自での施策は課題設定がしやすくなりそうです。 また、興味本位でも地方(地元)に目を向けてくれる人が増えるため、シビックテック界隈にとって追い風ですね。特に「新しいツールは触ってみる」エンジニアのハッカー魂には火をつけられるのではないかと注目しています。

要介護者、高齢者のわかりやすい課題解決を試みたチームが優勝

まずは今回のハッカソンの優勝作品から紹介しますが、外出する機会が少ない高齢者が仲間同士で集まれるようなイベントを探すアプリ「TsureDatsu」。

講評でも「需要をきっちり捕まえてる」「RESAS以外も使っていけばサービスとしてローンチできそう」「時間とかモチベーションがあれば継続開発してみてはどうか」と高評価を受けていました。


開発チームの I CARE YOU は「寝たきりの高齢者が外に出ることで元気になる」ことが提供価値だと強調。

イベントは、“高血圧” といったキーワードから、あるいは医療・介護施設周辺の地図から探すことができます。居住エリアや疾患などの共通点を持った患者同士がコミュニティを形成することで、悩みを共有するなど「社会的に健康になる」という流れです。

RESAS の高齢者の分布データを活用しており、シニアが少ないエリアは地図上で青く塗られます。オレンジのアイコンで表示されるイベント情報は協賛企業・アソビューさんの提供データをベースにしていますが、“高齢者が多いのにイベントが少ないエリア” が分かるため、企業が新たにイベントを開催する際の参考にもなります。


審査員からも「寝たきりの高齢者が自分でアプリを使えるとは思えないので、まさに “連れ立つ” 誰かが必要ですよね」と指摘があった通り、課題はいかに使ってもらうかという部分。

開発チームからは、アプリユーザーとしてはヘルパーさんを想定しているという返答が。ただ、多忙なヘルパーさんにアプリから検索・予約してもらうよりは、運営側が大人数向けのイベントに招待するという使い方のほうがいいかもしれないというリアルな想定もされていました。

「働き手・後継者・嫁の不在は、地方ではクリティカルな課題」

“農家で働きたい人” と “働き手を探している農家” をつなぐサービス「えだまめネット」も、地方の課題をよくとらえていると評価されました。最終結果では3位に選ばれています。


利用の流れはオーソドックスな求人サイトと同様です。働き手を募集する農家は求人データを、農家で働きたい人は農業経験などのプロフィールを入力します。地図上に作物のアイコンが表示され、日本のどのエリアでどんな作物がつくられているのか一目で分かる UI が特長です。

開発メンバーの実家がえだまめ農家ということで、プロダクト名の由来になっただけではなく、業界を理解した上でユースケースがしっかり想定されていました。

「レストランの経営者が野菜に関する理解を深めるために農業の現場に行く」「雪が積もる冬場に仕事がなくなる北海道や東北の農業従事者が、人手不足に困っている西日本の農家を手伝う」「無農薬のりんご農家で有名な木村さんの名声は農業界に轟いているので、国内外の若い人材が最先端の農業を学びに行く」 など、確かに理にかなっているなぁと。

今後は RESAS の “農業経営者・農業人口構成” などのデータを利用し、生産力が弱くなっていくと予測される地方をサイト上で優先的に PR するなどの展望も語られました。


“後継者を探している経営者” と “地方で輝きたい人” をつなげる「あととりっぷ(跡Trip)」も、近しいアプローチのサービスです。

あととりっぷでは「社長の平均年齢は都心より地方のほうが高い」「毎年およそ6万社の中小企業が廃業しており、後継者不足が原因である会社が多い」という課題に着目。

「旅費や交通費を負担してでもまずは自社や地域を知ってほしいという企業がある」というリサーチ結果のもと、地方の企業が旅費の負担や補助金などのおトク情報とともに募集要項を掲載するという仕様に落とし込みました。今の仕事に充実感を得られていない人、都会での生活に疲れた人を集客していくという展望です。

“地方全域×IT” の本題は「課題設定とアプローチ」よりも「いかに IT を使ってもらうか」ではないか

「えだまめネット」「あととりっぷ」ともに、審査員からは「地方に共通するクリティカルな課題にアプローチしている点は良い」と評されましたが、「やはりユーザー集客が課題になる」という指摘も。

ここまでは堅めのテイストでご紹介してきましたが、正直、個人的にも「課題設定が良かった分、各地方の企業やユーザーにどうやって使ってもらうかっていう展望を(アイデアベースでもいいから)もっと聞きたかった」という感想を持ちました。

優勝作品の「TsureDatsu」に関しても「市場が1兆円規模なのでマネタイズはしやすいのでは」みたいな話がありましたが、まったく同じ理論で特攻した結果として死屍累々の “不動産テック” 界隈とかありますからね。

地方の人や IT 化が進んでいない業界の人は、そもそも「今抱えている問題を IT でどうにかしよう、どうにかできるんじゃないか」という IT への期待・関心が薄いので、「積極的にコレ使ってくれたらいいね」っていう他力本願だと99%スケールしないと思っています。

「アナログな業界ゆえにこんな不便さがありますけど、このサービスを使うことでこんなに便利になりますよ〜」ってアピールをするITベンチャーはよくありますが、「まず電話か対面で会って話すほうがいいだろ」「デジタルとか、いざというときにデータ消えたり、お客さんの情報が漏れたりしたらどうすんだ」と言われるわけで。

働き手や後継者を募集する地方の企業も、募集要項を公開するまではオンラインでいいとしても、いざ応募があったときの対応は PC より電話でやりたくて、応募書類も紙の履歴書を持ってきてほしいんじゃないかと思います。高齢者の方々をイベントに誘う際も、ヘルパーさんは専用のアプリでイベント運営者と連絡を取るよりは、電話か LINE でやりたいんじゃないかと思います(使うツールを増やすと混乱するため)。


そもそも地方は特に高齢化していくし、20~30代で地方に移住する人も、Instagram に充実したオフの写真でも投稿してないとやっていけない都会での生活に疲れた人だったりする。

「健康的な生活に必要なものは衣食住であって、IT なんて別に必要ない。地方に来て、大切なことに改めて気づいた」みたいなカントリーポエムは今後もどんどん投下されていくと思います。“地方” という概念自体が “都会(消耗する場所)” へのアンチテーゼになってる側面もあるので、ITサービスが都会の日常にさらに深く定着しても、地方にはまったく定着しないかもしれない。地方×IT、農業×ITっていう発想自体が定着しないかもしれない と思うんですよね。

IT系コンテストも「都会・海外向け」と「地方向け」で切り分けないと混乱を招くかも

つまり、ハッカソンやアイデアソンを “地方×IT” と銘打って開催するからには、

  • 地方が共通して抱える課題を共有した上で、すべての地方のための施策として「IT をこのプロセスで活用する」という案を提示

  • 特定の地域(日本に多い部類の地域を抽象化して架空の地域にしてもいいかも)にフォーカスして、その地域ならではの活性化施策を考える

のどちらかのほうが、未来に近づけるのではないかと思います。

地方全域に対するシビックテックって要は “打倒・電話と書類” なので、たとえば “めっちゃ情報入力してもらえる UI デザインや施策” とか、“この地方の人なら電話回線を切ってでもリソース突っ込みたくなるプラットフォーム” みたいなものを審査するほうがリアルな感じがします。

女性向けプロダクトつくってる会社とかは、女性ユーザーのエンゲージを高める UI/UX とかめっちゃこだわってつくってるじゃないですか。まぁそうなるとハッカソンの応募作品ほとんどが LINE bot になる気もするけど。

また、○○×IT という取り組みが各所で精力的に行われている現代では、都心部から地方にいくよりは海外に出るような、イノベーションを目指すケースも切り分けて考えたほうがいいのではないかと思っています。

イノベーター輩出を目的とする国内最大の学生向けハッカソン「JPHACKS」の表彰式でも 「社会課題の解決というドグマにとらわれすぎなくてもええんやで」というアドバイスが贈られた ように、なんかハッカソンやアイデアソン自体がいろんな人の欲を吸収しすぎてゴールがぼやけてる気がしています。

特にブレストの延長線上にあるプロトタイピングとしてのハッカソンには個人的に価値を感じており、一過性のブームで終わらせてはいけないと思っているのですが、開催にあたって要件を整理してキッチリ打ち出さないと、イノベーター志向の人や地方の活動家など各クラスタが足を引っ張り合う形になりかねないなと。

都会はともかく、地方は割と「まじやばい」って感じなので、IT 業界にいるわれわれも地方のリアルを理解した上ですばやく頑張りましょう、という話で今回の現場からは以上になります。


(このプレゼンめっちゃ面白かったけど今回は泣く泣くカット。後日改めて紹介したいくらいです)

“地方×IT”は「そもそもITが求められてない」という前提から始めるべきではと、 #RESAS ハッカソンで改めて思った


地域活性化に関する仕事をやりたいっていう学生も増えてきましたが、まずたいていの企業の中で何かしらの価値を発揮できるようなスキルを身につけてからでいいと思っています。

地方は来るもの拒まずスタンスのほうがいいけど、“地方に来たけど価値出せない → 褒めてもらえない、居場所がない → 勝手に憧れて地方に来たのに勝手に幻滅して帰っていく” みたいな悲劇は少しでも減ってほしい。地方で働きたいって人でわざわざ富山県を選ぶ人は少ないと思うけど、富山県民は基本的に余所者には厳しいから(ここまで冒頭の挨拶)。

ということで、富山出身千葉在住・地域系のプロジェクトを準備中のシビックテッカーとして、RESASなどの地域データをつかって今後の地域社会に必要なプロダクトをつくるハッカソン「RESAS×Japan Hackathon」を見学してきました。

運営を仕切っていた、オープンデータ界隈では有名な “とにかく明るい五十嵐” さん(E2D3)に誘われてホイホイついていったって感じですが、地方で深刻な課題の解決を目指すプロダクトを見て、改めて「地方×IT」の今後ってどうなるんかなーってことを考えました。という、「裏・レポート」みたいな感じです。


一応、オフィシャルなまとめというか時系列順の実況と結果はこちらに。

2/4(土)5(日) RESAS×Japan Hackathon~地域の連鎖をデザインしよう〜(togetter)

各地域のデータをオープン化した RESAS は、“地元を救う” 施策を考えやすくなる

本編の前に補足説明を。

今回のハッカソンで使用した RESAS とは、国がオフィシャルに提供する「地域経済分析システム」のこと。「産業マップ」「地域経済循環マップ」「農林水産業マップ」「観光マップ」「人口マップ」「消費マップ」「自治体比較マップ」など、地方の自治体や企業が施策を考える上で参考にできるデータ集です。

地域ごとに、年齢別の人口分布と推移予測といったスタンダードなデータから、生活用品の購入金額、自地域の商品をよく買ってくれている地域など突っ込んだデータがわかるので、地域活性化および最近アツい「地方×IT(Civic Tech)」のプロダクトを企画する上で参考になります。

地域ごとの違いがわかることも大きいですが、自分たちが住む地域の傾向がわかることで、特に地方独自での施策は課題設定がしやすくなりそうです。 また、興味本位でも地方(地元)に目を向けてくれる人が増えるため、シビックテック界隈にとって追い風ですね。特に「新しいツールは触ってみる」エンジニアのハッカー魂には火をつけられるのではないかと注目しています。

要介護者、高齢者のわかりやすい課題解決を試みたチームが優勝

まずは今回のハッカソンの優勝作品から紹介しますが、外出する機会が少ない高齢者が仲間同士で集まれるようなイベントを探すアプリ「TsureDatsu」。

講評でも「需要をきっちり捕まえてる」「RESAS以外も使っていけばサービスとしてローンチできそう」「時間とかモチベーションがあれば継続開発してみてはどうか」と高評価を受けていました。


開発チームの I CARE YOU は「寝たきりの高齢者が外に出ることで元気になる」ことが提供価値だと強調。

イベントは、“高血圧” といったキーワードから、あるいは医療・介護施設周辺の地図から探すことができます。居住エリアや疾患などの共通点を持った患者同士がコミュニティを形成することで、悩みを共有するなど「社会的に健康になる」という流れです。

RESAS の高齢者の分布データを活用しており、シニアが少ないエリアは地図上で青く塗られます。オレンジのアイコンで表示されるイベント情報は協賛企業・アソビューさんの提供データをベースにしていますが、“高齢者が多いのにイベントが少ないエリア” が分かるため、企業が新たにイベントを開催する際の参考にもなります。


審査員からも「寝たきりの高齢者が自分でアプリを使えるとは思えないので、まさに “連れ立つ” 誰かが必要ですよね」と指摘があった通り、課題はいかに使ってもらうかという部分。

開発チームからは、アプリユーザーとしてはヘルパーさんを想定しているという返答が。ただ、多忙なヘルパーさんにアプリから検索・予約してもらうよりは、運営側が大人数向けのイベントに招待するという使い方のほうがいいかもしれないというリアルな想定もされていました。

「働き手・後継者・嫁の不在は、地方ではクリティカルな課題」

“農家で働きたい人” と “働き手を探している農家” をつなぐサービス「えだまめネット」も、地方の課題をよくとらえていると評価されました。最終結果では3位に選ばれています。


利用の流れはオーソドックスな求人サイトと同様です。働き手を募集する農家は求人データを、農家で働きたい人は農業経験などのプロフィールを入力します。地図上に作物のアイコンが表示され、日本のどのエリアでどんな作物がつくられているのか一目で分かる UI が特長です。

開発メンバーの実家がえだまめ農家ということで、プロダクト名の由来になっただけではなく、業界を理解した上でユースケースがしっかり想定されていました。

「レストランの経営者が野菜に関する理解を深めるために農業の現場に行く」「雪が積もる冬場に仕事がなくなる北海道や東北の農業従事者が、人手不足に困っている西日本の農家を手伝う」「無農薬のりんご農家で有名な木村さんの名声は農業界に轟いているので、国内外の若い人材が最先端の農業を学びに行く」 など、確かに理にかなっているなぁと。

今後は RESAS の “農業経営者・農業人口構成” などのデータを利用し、生産力が弱くなっていくと予測される地方をサイト上で優先的に PR するなどの展望も語られました。


“後継者を探している経営者” と “地方で輝きたい人” をつなげる「あととりっぷ(跡Trip)」も、近しいアプローチのサービスです。

あととりっぷでは「社長の平均年齢は都心より地方のほうが高い」「毎年およそ6万社の中小企業が廃業しており、後継者不足が原因である会社が多い」という課題に着目。

「旅費や交通費を負担してでもまずは自社や地域を知ってほしいという企業がある」というリサーチ結果のもと、地方の企業が旅費の負担や補助金などのおトク情報とともに募集要項を掲載するという仕様に落とし込みました。今の仕事に充実感を得られていない人、都会での生活に疲れた人を集客していくという展望です。

“地方全域×IT” の本題は「課題設定とアプローチ」よりも「いかに IT を使ってもらうか」ではないか

「えだまめネット」「あととりっぷ」ともに、審査員からは「地方に共通するクリティカルな課題にアプローチしている点は良い」と評されましたが、「やはりユーザー集客が課題になる」という指摘も。

ここまでは堅めのテイストでご紹介してきましたが、正直、個人的にも「課題設定が良かった分、各地方の企業やユーザーにどうやって使ってもらうかっていう展望を(アイデアベースでもいいから)もっと聞きたかった」という感想を持ちました。

優勝作品の「TsureDatsu」に関しても「市場が1兆円規模なのでマネタイズはしやすいのでは」みたいな話がありましたが、まったく同じ理論で特攻した結果として死屍累々の “不動産テック” 界隈とかありますからね。

地方の人や IT 化が進んでいない業界の人は、そもそも「今抱えている問題を IT でどうにかしよう、どうにかできるんじゃないか」という IT への期待・関心が薄いので、「積極的にコレ使ってくれたらいいね」っていう他力本願だと99%スケールしないと思っています。

「アナログな業界ゆえにこんな不便さがありますけど、このサービスを使うことでこんなに便利になりますよ〜」ってアピールをするITベンチャーはよくありますが、「まず電話か対面で会って話すほうがいいだろ」「デジタルとか、いざというときにデータ消えたり、お客さんの情報が漏れたりしたらどうすんだ」と言われるわけで。

働き手や後継者を募集する地方の企業も、募集要項を公開するまではオンラインでいいとしても、いざ応募があったときの対応は PC より電話でやりたくて、応募書類も紙の履歴書を持ってきてほしいんじゃないかと思います。高齢者の方々をイベントに誘う際も、ヘルパーさんは専用のアプリでイベント運営者と連絡を取るよりは、電話か LINE でやりたいんじゃないかと思います(使うツールを増やすと混乱するため)。


そもそも地方は特に高齢化していくし、20~30代で地方に移住する人も、Instagram に充実したオフの写真でも投稿してないとやっていけない都会での生活に疲れた人だったりする。

「健康的な生活に必要なものは衣食住であって、IT なんて別に必要ない。地方に来て、大切なことに改めて気づいた」みたいなカントリーポエムは今後もどんどん投下されていくと思います。“地方” という概念自体が “都会(消耗する場所)” へのアンチテーゼになってる側面もあるので、ITサービスが都会の日常にさらに深く定着しても、地方にはまったく定着しないかもしれない。地方×IT、農業×ITっていう発想自体が定着しないかもしれない と思うんですよね。

IT系コンテストも「都会・海外向け」と「地方向け」で切り分けないと混乱を招くかも

つまり、ハッカソンやアイデアソンを “地方×IT” と銘打って開催するからには、

  • 地方が共通して抱える課題を共有した上で、すべての地方のための施策として「IT をこのプロセスで活用する」という案を提示

  • 特定の地域(日本に多い部類の地域を抽象化して架空の地域にしてもいいかも)にフォーカスして、その地域ならではの活性化施策を考える

のどちらかのほうが、未来に近づけるのではないかと思います。

地方全域に対するシビックテックって要は “打倒・電話と書類” なので、たとえば “めっちゃ情報入力してもらえる UI デザインや施策” とか、“この地方の人なら電話回線を切ってでもリソース突っ込みたくなるプラットフォーム” みたいなものを審査するほうがリアルな感じがします。

女性向けプロダクトつくってる会社とかは、女性ユーザーのエンゲージを高める UI/UX とかめっちゃこだわってつくってるじゃないですか。まぁそうなるとハッカソンの応募作品ほとんどが LINE bot になる気もするけど。

また、○○×IT という取り組みが各所で精力的に行われている現代では、都心部から地方にいくよりは海外に出るような、イノベーションを目指すケースも切り分けて考えたほうがいいのではないかと思っています。

イノベーター輩出を目的とする国内最大の学生向けハッカソン「JPHACKS」の表彰式でも 「社会課題の解決というドグマにとらわれすぎなくてもええんやで」というアドバイスが贈られた ように、なんかハッカソンやアイデアソン自体がいろんな人の欲を吸収しすぎてゴールがぼやけてる気がしています。

特にブレストの延長線上にあるプロトタイピングとしてのハッカソンには個人的に価値を感じており、一過性のブームで終わらせてはいけないと思っているのですが、開催にあたって要件を整理してキッチリ打ち出さないと、イノベーター志向の人や地方の活動家など各クラスタが足を引っ張り合う形になりかねないなと。

都会はともかく、地方は割と「まじやばい」って感じなので、IT 業界にいるわれわれも地方のリアルを理解した上ですばやく頑張りましょう、という話で今回の現場からは以上になります。


(このプレゼンめっちゃ面白かったけど今回は泣く泣くカット。後日改めて紹介したいくらいです)