- 「広報」や「編集」の概念を常時アップデートしていく感じで -

おすすめのウォッカや、入門〜中級のブランデーに関してはそれぞれブログに好き放題書いてきましたが、クラフトジンというビッグウェーブには乗り切れていないのが現状。

ただジンに関してはジーヴァインやジン・ドーズのようなフランス産のトチ狂ったやつが一番好きなので、ジンというよりはウォッカやリキュールに近いような変わり種、オシャレなやつなんかを探しに行ってまいりました。


https://www.ginfest.tokyo/

世界の各地方から集められた 100 種類以上のクラフトジンが試飲できる日本初の大型ジンイベント「GINfest.Tokyo 2018」。試飲は 10ml で 100 円という破格のお値段で、実質 15〜20ml くらいドバドバ注いでくれてたので、ジン好きやアル中にとっては感涙のイベントでした。


私がアクセスを稼ぎたいだけのブロガーだったら「会場はこんなにオシャレなところで〜」「ジンは個性豊かでどれも美味しくて〜」「ジンの世界は奥深いので気になるところからぜひチャレンジしていきましょう!」という 2 秒で書けるような記事にするのですが、そういうのはそういう人に任せておいて、結構ガチめのレビューをしていきます。

なおフランスと北欧中心なので、オランダとかドイツのスピリッツが好きな方はそっち方面の手練れを探してくださると助かります。ジュネヴァとかボトル多すぎて追いきれんし。

ル・ジン クリスチャン・ドルーアン(フランス産・薬草系)




「おっ、ベネディクティンみたいなボトルやんけ」と目にとまったので確認したらやっぱりフランス産だった。ほんま趣味がわかりやすいなこいつら。

カルヴァドスの「クール・ド・リヨン」をつくっているクリスチャン・ドルーアンの新商品で、「俺たち自慢のりんごを使ってジンまで作ってやったぜ!」という、もう This is フランスとしか言いようがないやつ(シロックやジーヴァイン、ジン・ドーズとやってることは同じ)。

自社果樹園で栽培されている30種類ものりんごをベースとし、8つのアロマ(ジュニパーベリー、ジンジャー、バニラ、レモン、カルダモン、シナモン、アーモンド、ローズ)をそれぞれ別々に漬け込んで個々に蒸留した後にブレンドして作られています。

という、これもまたフランスらしさ全開の製法。30 種類もりんご使う必要ある?と思った人はフランスの酒には向いていない。なぜならリキュールの女王「シャルトリューズ」は 100 種類以上のハーブを使っているからだ。

味わいは割と複雑で、こねくりまわした感じが伝わってくる。「刺さる人にだけ刺さってくれればいいよ、ミーパーな庶民共に媚びる気はないよ」という貴族的なニュアンスで、高級版・エギュベルみたいな印象を受けた。エギュベルの2倍くらいの値段なのでバーで普及するかは別にして(だから 30 種類も使う必要ある?)、薬草酒好きならこれでジントニックとか、あるいはフォールン・エンジェルとかつくってみても面白いかもしれない。

Amazon で探す

ノエゾン by ジーヴァイン(フランス産・ハーバル系)

「もう、無理してオシャレぶるのはやめました。」

味・香り・ボトルデザインすべてにおいて芸術大国フランスのプライドが滲み出ている「ジーヴァイン フロレゾン」の影に隠れていた “地味なほう” ことノエゾン。このたびジーヴァインと袂を分かつ形で新ボトルをリリースしたら、印象が激変してしまった。


フロレゾンがだいぶイカレてる「ぶどう感あふれるリキュール寄りのスピリッツ」なのに対して、ノエゾンはジンらしいボタニカルな感じがしっかり残っており、フルーティ感は薄い。

ただ、ジントニックならフロレゾンのほうが華やかに仕上がってしまうが、ギムレットやマティーニ、ホワイトレディとかに使うなら断然ノエたん。問題はボトルデザインも地味で、この「ハーバルながらジンらしさもしっかり残っている」というジャンルはクラフトジン界隈で最大の激戦区なので、生き残れる気がしないところか(ジンらしさを消してるタイプと残してるタイプあるけど一長一短なのでクオリティどうこうの話でもなく、正面からぶつかるしかない)。

結局ノエたんはフロレゾンというぶっとんだ妹(イメージ)の影に隠れる運命なのかもしれない。長男・長女にはおすすめ。私は次男で末っ子なのでフロレゾンが好きです。

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ストックホルム・ブランネリ(スウェーデン産・バランス系・軽め)

若い夫婦二人が経営する、ストックホルム初の小さな新興蒸留所からエントリー。

クスリっぽさをなくしてボタニカル感出した感じで飲みやすい。値段さえ下がればスウェーデンのスピリッツの代表格「アブソルート・ウォッカ」的な “コスパが良いバランス型” ポジションも狙えるけど、ホームメイドで少量生産なんでお高くなるのがもったいない。

ジーヴァインのノエゾンに比べると軽めで、ボディがどっしりしてる感じではない。なのでアブソルート・ウォッカのイメージがよぎった。

ただ、これテイスティングしたときは結構舌が疲れてたのでそのせいかもしれない。というかフランスの酒のあとに飲むもんじゃない。

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ヘルシンキ・ドライ・ジン(フィンランド産・おしとやか系)


工業用アルコールかな?ってくらい地味なボトルからリリースされたフィンランド産のドライ・ジン。ウォッカでいえば「フィンランディア」という優良銘柄がある国だが、どうもこの国はこの質実剛健というか、品質が高いのにボトルが無骨すぎて損している印象がある。

テイストとしては、フィンランド産リンゴンベリーを中心に 9 種類のボタニカルの風味は確かに感じられるが、グリーン系の爽快感・清涼感が強い印象。ボトルのデザインからしてもネミロフ(ウクライナ)のバーチ・ウォッカに近い。

「無骨な父親に育てられた内気な田舎娘」という感じで、100 種類とかジンが集まるイベントに来てしまうとかなり埋没してしまいそう。その分ジンらしいしバーテンダー受けはすると思うものの、じゃあ大衆向けに 1,500 円(500ml ボトルで 4,500 円なので)でこれのジントニックを出して受け容れられるかというとたぶん無理。営業努力に賭けるしかない。

フィンランドからはもう一つ「キュロ ナプエ」も出品されていたが、こっちはもうボトルがイギリスを意識しまくってる感じがイマイチ気に入らなかった。でもこっちはもうちょい頑張ってるのかもしれない。

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HDC アクアビット + 同一メーカーのトニックウォーター

同一メーカーからオマケで出展されていたやつ。スタッフの方に「ウォッカはフィンランディア派なんですよ〜!」という業者感あふれる(※業者ではありません)挨拶をしていろいろ話し込んでいたらおすすめしてもらえました。

味は No.1 で、個人的に今回一番の収穫。このトニックウォーター自体、味の骨格がかなりしっかりしていて、当たりの部類。アクアヴィットをあわせるとヘルシンキ・ジン以上に “質実剛健” を地で行くパワフルな仕上がりに。

一般的なジントニックに対するこのアクアビットトニックは、コニャックに対するアルマニャックみたいな感じ。アルマニャックを「荒々しい」というとファンに怒られるので「パワフルな」と言っておきましょう。

ヘルシンキ・ティルニポンティッカ

同一メーカーからのオマケ出展。同じくオマケ枠であるリンゴンベリーのリキュールをつくる際に出た絞りかすを発酵させて蒸留したオー・ド・ヴィー。オー・ド・ヴィーというよりは「マール(グラッパ)みたいなやつ」と言うほうが製法的には的確かもしれない。

パンフレットによると食後酒としてエスプレッソとあわせたカクテルにとあるが、まぁそれはオー・ド・ヴィーの荒々しさをおとなしくさせるためだよなぁと。

とりあえずブランデーやマール・グラッパが好きな人はストレートで飲んでおくと社会勉強になる。ボトル 8,000 円らしいので、初回出荷分がちゃんとハケればいいなぁと祈ることしかできない。フラパンの XO とか買えばよくねとか口を滑らせてしまったブランデー党はフィンランドの氷河に幽閉されてくるといい。

サイレントプール(イギリス産・ハーバル系)

数量限定バルーングラス付 サイレントプールジン 700ml

__

内紛。ボンベイ帝国に喧嘩売りにきたなーって感じの。軽やかで華やかな、リキュールっぽくカクテルに使えるタイプのジン。

あと「ジンの香水」を自称しており、シャルトリューズという「酒の香水(飲む香水)」を擁するフランスにもちょっと喧嘩売ってるよね。まぁイギリスもフランスも基本的には高品質な酒をつくるからいいんだけど、それならもうちょいボトルをかっこよくしてくれればよかったのにと思う。フランスのセンスに比べると明らかにダサいぞ最近のイギリス酒(ビーフィーター 24 の新ボトルとか)。

ボトル 4,800 円なので、安くはないけどサファイアとスターの地位を脅かせるかというと…。結局ボトルのかっこよさでいえばサファイアのほうが上なんだよね。んで香水ブランディングだとシャルトリューズには勝てない。酒に色ついてないし。

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ジン・アグリコロ エヴラ(イタリア産・甘口)

サイレントプールの流れで、トチ狂った感じのジンだったので試してみた。

これはジンではない。ベリー主体でバニラとかのフレーバーも香るエレガントなジン。甘口のフレーバーウォッカ(ヴィル・ヴァルゲのウォーターメロンとかかな。グレイグースのオレンジほど極甘口ではない)くらいのインパクト。

ただこれジントニックにして飲むと「甘くて華やかで美味しいお酒」にはなるので、大衆受けという意味では優勝感ある。吉高由里子によってハイボール消費が爆発的に増えたみたいな感じで、イヴラヒモヴィッチとか使って CM やれば(イヴラに女性ファンがいるのかは知らん)。

逆にジントニック以外には使いようがなく、冷凍してストレートって感じでもないのでロックかソーダ割り(お好みで柑橘絞る)とかのほうがアリかも。フランス産、最近一気に需要を伸ばしたエルダーフラワーリキュールの「サンジェルマン」みたいな成長曲線を描けるかどうかに注目。

まぁクラフトジンもカクテルも「こねくりまわしたもん勝ち」の世界にはなるよね

もう材料 3 種類のカクテルなんてのは出尽くしてますし、カクテルコンテストにいくと材料を 4〜5 種類使ってナンボみたいな世界なわけじゃないですか。ただ人間の舌ってバーに通ってるような手練れでも 4〜5 種類の味なんて認識できないと思うんですよ。ましてや 30 種類のりんごとか 100 種類のハーブとか。

ワインでも「アルコール度数高くて華やかなものはパーカー・ポイントが高くなりがち」と言われてたりしたわけですし、クラフトジンもたぶん同じことが言える。 「○○を原料にしている珍しいジン」ってもう 50 回くらい聞いたし。

つまりクラフトジンを飲み比べていくほどヘルシンキのドライ・ジンなんかは確実に「忘れ去られる」んですよね、ジーヴァイン フロレゾンとかアグリコロ エヴラみたいなイカレてるやつの強烈な印象に書き換えられていく。

その点ウォッカはいい。あまりにも逸脱しているものは「これはウォッカではない」と切り捨てることが許される(個人的な意見)から。「そういう甘いのが好きならジンかリキュール飲んだほうがいいよ」と言えるから。だから売れないし広まらないという話でもあるんですが。

まぁなんかそうやって「派手にしたもん勝ち」の世界で舌が疲れてしまったら一回ウォッカ沼に来てみるのもいいと思います。ウォッカはいいぞ。

参考:おすすめのウォッカに関する入門記事

「GINfest TOKYO (ジンフェスティバル)」でフランスと北欧中心にクラフトジンをいろいろ試してきたのでレビューする

おすすめのウォッカや、入門〜中級のブランデーに関してはそれぞれブログに好き放題書いてきましたが、クラフトジンというビッグウェーブには乗り切れていないのが現状。

ただジンに関してはジーヴァインやジン・ドーズのようなフランス産のトチ狂ったやつが一番好きなので、ジンというよりはウォッカやリキュールに近いような変わり種、オシャレなやつなんかを探しに行ってまいりました。


https://www.ginfest.tokyo/

世界の各地方から集められた 100 種類以上のクラフトジンが試飲できる日本初の大型ジンイベント「GINfest.Tokyo 2018」。試飲は 10ml で 100 円という破格のお値段で、実質 15〜20ml くらいドバドバ注いでくれてたので、ジン好きやアル中にとっては感涙のイベントでした。


私がアクセスを稼ぎたいだけのブロガーだったら「会場はこんなにオシャレなところで〜」「ジンは個性豊かでどれも美味しくて〜」「ジンの世界は奥深いので気になるところからぜひチャレンジしていきましょう!」という 2 秒で書けるような記事にするのですが、そういうのはそういう人に任せておいて、結構ガチめのレビューをしていきます。

なおフランスと北欧中心なので、オランダとかドイツのスピリッツが好きな方はそっち方面の手練れを探してくださると助かります。ジュネヴァとかボトル多すぎて追いきれんし。

ル・ジン クリスチャン・ドルーアン(フランス産・薬草系)




「おっ、ベネディクティンみたいなボトルやんけ」と目にとまったので確認したらやっぱりフランス産だった。ほんま趣味がわかりやすいなこいつら。

カルヴァドスの「クール・ド・リヨン」をつくっているクリスチャン・ドルーアンの新商品で、「俺たち自慢のりんごを使ってジンまで作ってやったぜ!」という、もう This is フランスとしか言いようがないやつ(シロックやジーヴァイン、ジン・ドーズとやってることは同じ)。

自社果樹園で栽培されている30種類ものりんごをベースとし、8つのアロマ(ジュニパーベリー、ジンジャー、バニラ、レモン、カルダモン、シナモン、アーモンド、ローズ)をそれぞれ別々に漬け込んで個々に蒸留した後にブレンドして作られています。

という、これもまたフランスらしさ全開の製法。30 種類もりんご使う必要ある?と思った人はフランスの酒には向いていない。なぜならリキュールの女王「シャルトリューズ」は 100 種類以上のハーブを使っているからだ。

味わいは割と複雑で、こねくりまわした感じが伝わってくる。「刺さる人にだけ刺さってくれればいいよ、ミーパーな庶民共に媚びる気はないよ」という貴族的なニュアンスで、高級版・エギュベルみたいな印象を受けた。エギュベルの2倍くらいの値段なのでバーで普及するかは別にして(だから 30 種類も使う必要ある?)、薬草酒好きならこれでジントニックとか、あるいはフォールン・エンジェルとかつくってみても面白いかもしれない。

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ノエゾン by ジーヴァイン(フランス産・ハーバル系)

「もう、無理してオシャレぶるのはやめました。」

味・香り・ボトルデザインすべてにおいて芸術大国フランスのプライドが滲み出ている「ジーヴァイン フロレゾン」の影に隠れていた “地味なほう” ことノエゾン。このたびジーヴァインと袂を分かつ形で新ボトルをリリースしたら、印象が激変してしまった。


フロレゾンがだいぶイカレてる「ぶどう感あふれるリキュール寄りのスピリッツ」なのに対して、ノエゾンはジンらしいボタニカルな感じがしっかり残っており、フルーティ感は薄い。

ただ、ジントニックならフロレゾンのほうが華やかに仕上がってしまうが、ギムレットやマティーニ、ホワイトレディとかに使うなら断然ノエたん。問題はボトルデザインも地味で、この「ハーバルながらジンらしさもしっかり残っている」というジャンルはクラフトジン界隈で最大の激戦区なので、生き残れる気がしないところか(ジンらしさを消してるタイプと残してるタイプあるけど一長一短なのでクオリティどうこうの話でもなく、正面からぶつかるしかない)。

結局ノエたんはフロレゾンというぶっとんだ妹(イメージ)の影に隠れる運命なのかもしれない。長男・長女にはおすすめ。私は次男で末っ子なのでフロレゾンが好きです。

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ストックホルム・ブランネリ(スウェーデン産・バランス系・軽め)

若い夫婦二人が経営する、ストックホルム初の小さな新興蒸留所からエントリー。

クスリっぽさをなくしてボタニカル感出した感じで飲みやすい。値段さえ下がればスウェーデンのスピリッツの代表格「アブソルート・ウォッカ」的な “コスパが良いバランス型” ポジションも狙えるけど、ホームメイドで少量生産なんでお高くなるのがもったいない。

ジーヴァインのノエゾンに比べると軽めで、ボディがどっしりしてる感じではない。なのでアブソルート・ウォッカのイメージがよぎった。

ただ、これテイスティングしたときは結構舌が疲れてたのでそのせいかもしれない。というかフランスの酒のあとに飲むもんじゃない。

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ヘルシンキ・ドライ・ジン(フィンランド産・おしとやか系)


工業用アルコールかな?ってくらい地味なボトルからリリースされたフィンランド産のドライ・ジン。ウォッカでいえば「フィンランディア」という優良銘柄がある国だが、どうもこの国はこの質実剛健というか、品質が高いのにボトルが無骨すぎて損している印象がある。

テイストとしては、フィンランド産リンゴンベリーを中心に 9 種類のボタニカルの風味は確かに感じられるが、グリーン系の爽快感・清涼感が強い印象。ボトルのデザインからしてもネミロフ(ウクライナ)のバーチ・ウォッカに近い。

「無骨な父親に育てられた内気な田舎娘」という感じで、100 種類とかジンが集まるイベントに来てしまうとかなり埋没してしまいそう。その分ジンらしいしバーテンダー受けはすると思うものの、じゃあ大衆向けに 1,500 円(500ml ボトルで 4,500 円なので)でこれのジントニックを出して受け容れられるかというとたぶん無理。営業努力に賭けるしかない。

フィンランドからはもう一つ「キュロ ナプエ」も出品されていたが、こっちはもうボトルがイギリスを意識しまくってる感じがイマイチ気に入らなかった。でもこっちはもうちょい頑張ってるのかもしれない。

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HDC アクアビット + 同一メーカーのトニックウォーター

同一メーカーからオマケで出展されていたやつ。スタッフの方に「ウォッカはフィンランディア派なんですよ〜!」という業者感あふれる(※業者ではありません)挨拶をしていろいろ話し込んでいたらおすすめしてもらえました。

味は No.1 で、個人的に今回一番の収穫。このトニックウォーター自体、味の骨格がかなりしっかりしていて、当たりの部類。アクアヴィットをあわせるとヘルシンキ・ジン以上に “質実剛健” を地で行くパワフルな仕上がりに。

一般的なジントニックに対するこのアクアビットトニックは、コニャックに対するアルマニャックみたいな感じ。アルマニャックを「荒々しい」というとファンに怒られるので「パワフルな」と言っておきましょう。

ヘルシンキ・ティルニポンティッカ

同一メーカーからのオマケ出展。同じくオマケ枠であるリンゴンベリーのリキュールをつくる際に出た絞りかすを発酵させて蒸留したオー・ド・ヴィー。オー・ド・ヴィーというよりは「マール(グラッパ)みたいなやつ」と言うほうが製法的には的確かもしれない。

パンフレットによると食後酒としてエスプレッソとあわせたカクテルにとあるが、まぁそれはオー・ド・ヴィーの荒々しさをおとなしくさせるためだよなぁと。

とりあえずブランデーやマール・グラッパが好きな人はストレートで飲んでおくと社会勉強になる。ボトル 8,000 円らしいので、初回出荷分がちゃんとハケればいいなぁと祈ることしかできない。フラパンの XO とか買えばよくねとか口を滑らせてしまったブランデー党はフィンランドの氷河に幽閉されてくるといい。

サイレントプール(イギリス産・ハーバル系)

数量限定バルーングラス付 サイレントプールジン 700ml

__

内紛。ボンベイ帝国に喧嘩売りにきたなーって感じの。軽やかで華やかな、リキュールっぽくカクテルに使えるタイプのジン。

あと「ジンの香水」を自称しており、シャルトリューズという「酒の香水(飲む香水)」を擁するフランスにもちょっと喧嘩売ってるよね。まぁイギリスもフランスも基本的には高品質な酒をつくるからいいんだけど、それならもうちょいボトルをかっこよくしてくれればよかったのにと思う。フランスのセンスに比べると明らかにダサいぞ最近のイギリス酒(ビーフィーター 24 の新ボトルとか)。

ボトル 4,800 円なので、安くはないけどサファイアとスターの地位を脅かせるかというと…。結局ボトルのかっこよさでいえばサファイアのほうが上なんだよね。んで香水ブランディングだとシャルトリューズには勝てない。酒に色ついてないし。

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ジン・アグリコロ エヴラ(イタリア産・甘口)

サイレントプールの流れで、トチ狂った感じのジンだったので試してみた。

これはジンではない。ベリー主体でバニラとかのフレーバーも香るエレガントなジン。甘口のフレーバーウォッカ(ヴィル・ヴァルゲのウォーターメロンとかかな。グレイグースのオレンジほど極甘口ではない)くらいのインパクト。

ただこれジントニックにして飲むと「甘くて華やかで美味しいお酒」にはなるので、大衆受けという意味では優勝感ある。吉高由里子によってハイボール消費が爆発的に増えたみたいな感じで、イヴラヒモヴィッチとか使って CM やれば(イヴラに女性ファンがいるのかは知らん)。

逆にジントニック以外には使いようがなく、冷凍してストレートって感じでもないのでロックかソーダ割り(お好みで柑橘絞る)とかのほうがアリかも。フランス産、最近一気に需要を伸ばしたエルダーフラワーリキュールの「サンジェルマン」みたいな成長曲線を描けるかどうかに注目。

まぁクラフトジンもカクテルも「こねくりまわしたもん勝ち」の世界にはなるよね

もう材料 3 種類のカクテルなんてのは出尽くしてますし、カクテルコンテストにいくと材料を 4〜5 種類使ってナンボみたいな世界なわけじゃないですか。ただ人間の舌ってバーに通ってるような手練れでも 4〜5 種類の味なんて認識できないと思うんですよ。ましてや 30 種類のりんごとか 100 種類のハーブとか。

ワインでも「アルコール度数高くて華やかなものはパーカー・ポイントが高くなりがち」と言われてたりしたわけですし、クラフトジンもたぶん同じことが言える。 「○○を原料にしている珍しいジン」ってもう 50 回くらい聞いたし。

つまりクラフトジンを飲み比べていくほどヘルシンキのドライ・ジンなんかは確実に「忘れ去られる」んですよね、ジーヴァイン フロレゾンとかアグリコロ エヴラみたいなイカレてるやつの強烈な印象に書き換えられていく。

その点ウォッカはいい。あまりにも逸脱しているものは「これはウォッカではない」と切り捨てることが許される(個人的な意見)から。「そういう甘いのが好きならジンかリキュール飲んだほうがいいよ」と言えるから。だから売れないし広まらないという話でもあるんですが。

まぁなんかそうやって「派手にしたもん勝ち」の世界で舌が疲れてしまったら一回ウォッカ沼に来てみるのもいいと思います。ウォッカはいいぞ。

参考:おすすめのウォッカに関する入門記事